秘密の色

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 こういうことは、別世界のことだと思っていた。  あまりよく知らない男の人に抱きしめられて、口唇を塞がれて、抵抗らしい抵抗もせずにされるがままになって──っていうの。  自分はそういうことで楽しいと感じるタイプじゃないとさえ思っていたし。  ……だけど、判らない。  頭の中がくるくる回って、何も考えられない。  正直、初めて男の人とキスをした時、あたしの中には違和感がいっぱいだった。  自分のものじゃない唾液が触れることが、違和感っていうか。  でも、回数を重ねていくうちに慣れていったし、立花先輩のこと大好きだったし、「ああ、こういうものか」って思ってた。  だけど、どうしてだろう。  あたしは、虹原岳はどういう人なのか知りたいって思っただけだ。  なのに、さっきもだけどこうして触れる口唇には何の違和感もなかった。  人通りの少ない繁華街の外れ、虹原岳はあたしの姿が人目につかないよう暗がりでキスを繰り返す。 .
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