秘密の色

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 いつでも胸を触れるよ、と彼が暗に言っているのが判った。  口では何も言ってないのに、目と、指先の仕草で。  ──やめて欲しいというなら今のうちだよ、ということも。  けれど愚かなことに、酔いとキスで痺れたあたしの頭の中は、今口にしようとしている疑問だけで精一杯だ。 「なんで、あの一瞬だけでそんなこと、判るの……」  布地の下にわずかに滑り込んだ指先が、ブラストラップを軽くねじる。その動きが一瞬止まった。  虹原岳はこちらを向いたまま、何か考えるように視線をすっとそらす。  何か考えているのは判ったけれど、その内容まではあたしじゃ判らない。  すると彼はふっと眉尻を下げて、寂しげに微笑んだ。 「さあ。俺とさっきの男の下衆具合が同じくらい、ってことじゃないの」 「なんで……」  なんでそんな自分を蔑むようなこと、と言いかけた瞬間、虹原岳はもう一度あたしの口唇を塞ぐ。  ブラストラップをねじって遊んでいた指が器用に滑り落ちて、あたしの胸を直接掴んだ。 「タイムリミット。もう、何言っても聞かない」 「えっ、あの、虹原さん……っ!」 .
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