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「余裕かましてたら、その女、俺のこと選んでくれなかったから。カッコつけて引いたけど、結構堪えてて」
「……」
「自分から言うの、ちょっと怖いわけ……判る?」
それは……判らなくもないけど。
コクンと頷くと、虹原さんは苦笑した。
「悪いね、肝心な時にヘタレで」
「そんなこと、思ってない……」
「今もそう。華緒梨の気が変わらないうちにやっちまえ、って感じだし」
「ええ?」
虹原さんは胸元まで伸びたあたしの髪先を指先で弄りながら、ふっと笑う。
「気持ちが違えば、感度も変わる。今、それを実感してるとこ」
「……そういう言い方、なんか小説家さん、って感じ……」
「小説家なんだよ、駄文だけど」
「そんなことな……あ」
そのままそっと押し倒されて、虹原さんの口唇が胸元に落ちてきた。
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