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ドアが開かれた瞬間、真っ暗な玄関先でぎゅっと抱きしめられた。
「さっきの続きから、やり直し」
虹原さんは鍵を閉め、あたしの両頬をふわっと包むようにしてキスをしてくる。
ここまでついてきてしまって、拒否も何もないけど──今夜のあたしと虹原さんの間には、そこに至るまでにいくつかの手続きが必要な筈だった。
「ん……」
さっきのタクシーの中で散々煽られた微熱が、すぐに戻ってくる。
虹原さんの息遣いと口唇で、自分のスイッチはこれなんだと──身体の奥底からのシグナルが響く。
恥ずかしい。
どうしたらいいか、判らない。
でも、これを遠ざけて逃げるのはもっと嫌。
さっきの衝撃的な光景を、忘れたわけじゃない。このまま昨夜みたいなことをするのは嫌。
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