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訊かれたからって、全部正直に答えるつもりなんてないけど……。
「お前、小説家と付き合ってるって本当か?」
せー兄ちゃんの言葉に、持っていたスプーンを落とし、ガチャンと鳴らしてしまった。
せー兄ちゃんの鋭くて真っ黒い瞳が、じくりとあたしを視線で刺した。
……これは、正直に答える答えないの話じゃない……。
どうしてだか全部知っている様子のせー兄ちゃんの視線を受け止めながら、あたしは落ち着け、落ち着け……と自分に言い聞かせた。
「……そう、だけど」
「ほほー」
心底意外そうに眉を上げ、せー兄ちゃんはナイフとフォークで肉を切り分ける。
「何で、知ってるの」
「お前、俺んとこの人間と親父んとこの人間、どんだけ街に放たれてるかまだ自覚ないだろ」
「……」
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