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「お前の親の立場になって、想像してみただけ。こんな男、ただでさえ心配させんだろうな……とか」
「こんな男?」
「そ。社会保障とか、俺にはねーから。銀二にはあるけど、俺にはないもん」
「そんなこと……だって岳さん、あんなにテレビに出て……それに、本だって映画化されたものはもうすぐ80万部とか……」
「はは、ありがと。これがずっと続きゃいいけどさぁ、一発屋かも知れないし」
力なく笑った岳さんは、少し寂しそうだった。その顔で、何も考えていないのは自分の方なのだとますます理解できてしまって、思わず言葉を失った。
「もちろん、こんなんで終わる気はないけど。俺がいいと思って書いたものが、世間もそう思うとは限らないし」
「……で、でも……その為に銀ちゃんとか、出版社が……」
「確かに、今の状態は銀二のおかげだな。本人には絶対言いたくないけど、あいつには感謝のしようもないし、頭上がらない。でもあいつ会社員なんだよ、華緒梨」
「……?」
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