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すると岳さんはテーブルに両肘をつき、あたしの顔を覗き込む。
「……悪かったよ。今のは俺が自分で抱えなきゃならないことなのに、愚痴みたいになっちまった」
「そんな……」
岳さんの手が遠慮がちに伸びてきて、あたしの頭をサラリと撫でた。
「記事のこと身内に説明するの、大丈夫か?」
「う……うん、それは、やる。ちゃんと、説明する……」
「もし怒られたりしたら、ちゃんと言って。俺、ちゃんと頭下げに行くから」
真面目な顔でそう言ってから、岳さんはまた首を傾げる。
「……って、怒られてから行くんじゃガキのすることか。やっぱ頼りねーな、俺」
「そんなこと、ないから!」
あたしが息巻いてそう言うと、岳さんはまた力なく笑った。
──こういう時、どうしたらいいんだろう。
ちょっと元気のなくなってしまった岳さんを見ながら、あたしは自分が何も言ってあげられないことがショックで、途方に暮れてしまいそうだった。
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