ひたひたと、忍び寄る。

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 それは、あたし達一般人が芸能界というものに対して簡単に連想してしまうようなイメージとは、遠くかけ離れてしまっているものだから。 「こういうのは好きじゃない」と言いながらテレビに出ているのだとしても、笑顔でイケメン作家のイメージを演出している岳さんはプロだなあ……と感心してしまうだけだ。  でも、そうだよね。それだけじゃきっと駄目だ。 「……ごめんなさい」  彼の隣にいる覚悟がまだ足りないと感じ、シュンとして俯くと、岳さんはハッとして顔を上げる。 「……なんで華緒梨が謝んの。……悪かったよ」 「え?」 「いや、お前一般人なのに……てか、俺もそのつもりだったのに、なんか……巻き込んだ」 「あ……」  苛立ちをまだ目尻に滲ませつつ、岳さんは溜め息をついた。  あたしを気遣ってくれていたのか……。 .
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