過去と現在の秤。

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「聞かされて……って?」  里中さんはこの数年、ずっと変わらない。  あたし達後輩同士が仲良くなるのを見ているのが楽しいだけの、世話焼きお兄さんだ。  きょとんとして宮下先輩を見ていると、彼は少し気まずそうにがしがし……と頭をかいた。 「俺が、お前のこと狙ってたのはホント」 「えっ!?」  思わず大きな声を出しそうになってしまった。  宮下先輩は苦笑しながら人差し指を立て、落ち着いた様子で「しーっ」とあたしをたしなめる。 「俺、去年の春から集まりに出てないだろ?」 「え? ええ、そうですね」 「出禁くらってた。里中さんに」  出禁って……ああ、出入り禁止のことか……。  ぼんやり言葉の意味を考えていると、宮下先輩は肩を竦める。 .
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