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『淳成社でデビュー決まるまでに、あちこちの出版社行ってたことあって。どこも原稿預かりまでは行ったんだけど、なかなかね。銀二が一番反応よくて、頑張って会議にかけてくれたんだよ』
「へえ……」
いわゆる「持ち込み」ってやつだろうか。聞いたことくらいはある。
そんな昔の下積み時代の話をしてくれるのが嬉しくて、息を弾ませながらも頬が緩んでしまう。
「えっと、よかったね、でいいんだよね?」
『んー、まあね。サンキュ』
岳さんが、電波の向こうでふっと笑った。その声があまりに優しげで、その場に倒れてしまいたくなってしまう。
いけない、彼氏に萌えてる場合じゃないってば……。
こんなところで倒れてたら、本気で脱水症状起こしちゃう。
自分的にわざとらしいけど、岳さんには聞こえないようにゆっくりと深呼吸をした。
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