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「お嬢さん?」
乗って下さい、と助手席のドアを開けてくれながら佐々木さんは軽く首を傾げる。
その態度はとても柔和な感じで、前みたいなサングラスではなく眼鏡ということもあって、怖いことなんて何ひとつなさげなんだけど……。
それでもお父さんの秘書だ、この人は。
この間も思ったけど、ただ者じゃないオーラだけがガンガン出ている。こういう人達を見て育ってきた筈なのに、つくづく自分の凡庸っぷりが嫌になる。
「何でも、ないです」
ドアを開けたまま微動だにせずあたしを見つめていた佐々木さんは、乗るまで何も語ってくれなさそうだった。
軽くブルンと首を振って、佐々木さんの示すまま車に乗った。
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