戻らない時間の中で。

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「よ。久しぶり」  ドアを開けると、鳶島さんがいた。  鳶島雅紀(トビシマ マサキ)さんは、せー兄ちゃんの後輩だ。いくつかあるせー兄ちゃんのお店のうち、ホストクラブで店長を勤めている。  鳶島さんは、気付けばあたしのゲーム友達……みたいな感じになっていた。別にあたしはゲーマーじゃないけど、せー兄ちゃんのところを訪ねても鳶島さんしかいない時、そうやって時間を潰してくれていた。  何せ、あたしが子どもの頃からまったく調子が変わらないものだから、鳶島さんに対してはつい気安い態度になってしまう。  相変わらずよく手入れされた鳶島さんの金色の短髪は、いつ見てもつやつや。 「大事なお客様って、鳶島さんのことだったの……」  何となく拍子抜けしてしまって肩を落とすと、鳶島さんは「おいおい」と苦笑する。 .
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