何も知らなかった。

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 立花先輩はちら……とゆりを見下ろした。たぶん、ゆりは噛み付きそうな顔をしているんだろうと思う。  ありがたい友情には、今は引っ込んでいてもらうことにする。 「ゆり、今立花先輩から大事なこと聞こうとしてるの。怒らないで」 「……大丈夫?」 「大丈夫」  さあ話してください、というように立花先輩を見上げた。また、彼の左の頬がピクピクと動く。  本当に、相当気まずいんだろう。  けれど、やがて諦めたように息をついた。 「……そもそも、呼び止めたの俺だしね。判ったよ……」  立花先輩は日陰の電柱にもたれ、ぽつりぽつりと話し始めた。 .
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