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鳶島さんのいるテーブルに、お父さんの今の奥さんである香苗(カナエ)さんがいた。
こっちにいらっしゃい、と香苗さんに手招きされて、びくびくしながら同じテーブルの空いた席に腰を下ろす。
よく見ると、鳶島さんの口の端にも小さな痣ができていた。
「雛(ヒナ)さんがどうかしたの?」
雛さんは鳶島さんの奥さんで、せー兄ちゃんの妹分。あたしにとっても馴染み深いお姉さんだ。
あたしは鳶島さんよりも雛さんと親しいから、彼女のことならよく知っている。
鳶島さんは肩を竦めながら、テーブルに大袈裟に突っ伏した。
「これ、雛にやられたんだよ。しばらく帰ってくんなって叩き出されちまって」
「あなたが余計なことするからよ」
香苗さんは鳶島さんの情けない顔を見るなり、ぷっと吹き出した。
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