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両手で頬を押さえて俯くと、香苗さんがまた吹き出した。
「聖夜さんに黙って何勝手なことしてんのよ! って怒られたのよね。で、行くところがないからってここに」
「だって職場になんか寝泊まりしたら、誰になんて言われるやら……俺にだって一応、メンツあるんですからね」
「その顔でメンツって。あなた」
もう止まらないらしい香苗さんは、アハハと遠慮なく鳶島さんの顔を指差しながら笑った。
ふて腐れる鳶島さんの顔を見ながら、あたしは何となく居心地が悪くなって、ペコリと頭を下げる。
「……なんか、ごめんなさい」
「いや、華緒梨ちゃんは悪くないの。悪いのは、雛に口答えした俺だから」
「岳さんとのことを邪魔したことじゃないんだ……」
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