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メーカーの完全防水──という謳い文句を信頼しないわけではない。
が、この土砂降りの雨の中で無防備に操作するほど、馬鹿ではないつもりだ。
傘を差してなお降り注いでくる雨に眉根を寄せながら、ぐずぐずの足元を気にすることもなく携帯を操作して、耳元に持っていった。
びしゃびしゃに濡れるのは好みじゃないが、雨の夜道、人通りの少ないアスファルトを街灯が照らして反射している光景は、幻想的で好きだ。
わざわざ雨の夜道を歩くのは、いつ以来だったっけ。
そんなことを考えていると、トゥルルル……と耳元で呼び出し音が鳴り始めた。華緒梨に電話をかけるといつも何か歌が流れていたっけ、ということを思い出す。
だから、少し違和感があった。
付き合い始めて、そう時間は経っていないのに。
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