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華緒梨が何を言おうとしているのかはもう判ったが、言いたい彼女の気持ちを尊重してその言葉を遮るのはやめにしておく。
男は言いたいことを堪えてもそうダメージはないが(むしろ言いたいこと程飲み込むような生き物だと俺は思っている)、女がそれをやると確実に男の倍以上のストレスになる──筈だ。
そういう野暮な理屈を抜きにしても、華緒梨が何かムキになって話しているところを見るのが好きなだけなんだけど。
華緒梨は案の定、持っていた文庫本の中身を俺に見えるようにしてまたパラパラとめくって見せる。
「こういうお仕事が2つってことでしょ?」
「そうだけど」
「いつもは、ひとつでしょ?」
「そうだけど」
「それが2つって! 絶対身体によくない!」
「……」
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