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開かれてから、よりによってそれか……とちょっと恥ずかしくなってしまった。
すると何を思ったか、華緒梨はそれを目で追いながら、
「『彼女は恥じらって、首を振った。それが縦にではなく横だったことに安心しながら、西野は顔を傾ける。彼女のかけている眼鏡が当たらないように気を遣いながら、食むような口付けをかわす。だんだん深くなるそれは──……』」
──いきなりそうして音読し始めたのだった。
「……声に出さないでくれる。恥ずかしいんだけど」
「えっ、あっ、ごめんなさ……」
華緒梨は慌てて自分の口元を手で覆うと、困ったように俺の顔を見た。
「目の前で読まれるのは何ともないけど、さすがに声に出されるとな」
俺が肩を竦めて笑うと、華緒梨はもう一度ディスプレイに目を落とす。しばらくその目が左右に忙しなく動いた。
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