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「それなら、馴染みの編集部の中で女性を紹介してもらった方が……」
「いえ、知らない女性はごめんです。織部さんがいいんです」
「わがままねえ」
ようやく彼女はクスッと肩を竦めて笑って俺を見た。やっぱり、出来の悪い弟を見るような目だ。
織部さんはようやく原稿に手を伸ばすと、パラパラとめくり始める。忙しなく動いていたその目が、ハッと見開かれた。
「虹原さん、これ……」
「だから、織部さんに……」
織部さんは何度か俺の顔と原稿を見比べて──やがて、何か思いついたようにふっと息を呑む。
「虹原さん、私ちょっと思いついたことがあるんだけど。ちょっと、いい?」
「え? ……あ、はい」
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