岳の回想録。

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   最初、あれ、何だっけ。 「ああ、自分は傍観者の立場なんだ──」って、そう思った最初。  そっか、あれ、親父の葬式の日だっけ。  昔、なんかのドラマか映画で聞いた。 「人が死んだ時には、雨が降るんだ」という言葉。  毎日どこかで起きてることなんだから、そういうこともあるだろう。まったく辛気くさい。  そんな風に斜に構えていたのに、親父の葬式で本当に雨が降ったんだ。  斎場に隣接された火葬場の中の炉のひとつに親父の棺が収まって、出てくるのは2時間後、と聞かされた時だった。  空は青くてどう見ても晴れてる。曇りと言える程雲も厚くはない。  でも、火葬場を出た瞬間冷たい小雨がぱたぱたと落ちてきたんだ。傘がいる程ではなかった。 .
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