同じ瞬間を刻んで。

14/39
324人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
   こいつの存在に気付いたのは、俺の方だ。今さら立って逃げ出すことも躊躇われて、両肘をついてその場で頭を抱えた。  こんなやつを置き去りにしたら、今度は何を書かれるか判らない、ということもあるんだけど……。  ここまで語られて、こいつが何を見聞きしたかを確かめずに帰るなんて、そんなこととてもじゃないができない。 「……それで?」 「え?」 「それで、何なんだよ。まだ俺に何か用があるのか」 「あ、そうだ。サインもらえません?」  ヘラッと笑った綾瀬のスポーツキャップを握って、その頭をスパンと叩いてやった。 「いてっ」 「バカじゃないの。何なんだよ」 「すみません、そうじゃなくてですね」 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!