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華緒梨は驚いたように顔を上げ、ぱちぱち……と瞬きをする。その目元に、わずかに喜びが混じった。
その気配に誘われるように、周りを見回してからそっと顔を寄せる。
「華緒梨がひとりいるだけでいいよ。俺自身の欲求、華緒梨だけで満たされる」
口にするには少々恥ずかしいものがあるが、昨夜は思ったことを何一つ口にしてやらなかったので、その埋め合わせのつもりでささやいた。
すると、さっきから冷たいものを食べ続けている筈の華緒梨の頬が、わずかに赤く染まる。
「……よく、そんな恥ずかしいこと言えるね……」
「でも、嬉しいだろ?」
「……」
「華緒梨が喜ぶなら、可能な限り何でも言うけど」
「……ん」
「ただ、言い損はごめんだな。俺は正当な見返りをここに要求することにする」
「え、ええっ!?」
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