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周りを気にしてか、華緒梨は若干ひそひそ声で言いながら俺を睨みつける。全然迫力はないけど。
俺がクッと小さく笑うと、華緒梨はむうっと口唇を噛み締める。
全身の毛が逆立った子猫みたいで、怖くも何ともない。
まあ、そんな彼女をナメているわけではないということは重々承知している。そんなの、他の誰でもない俺が一番よく理解しているんだから。
言おうか言うまいか、華緒梨の瞳をじっと覗き込みながら考える。
これを伝えて、果たしてどんな反応をしてくれるのだろうか。もし拒否されてしまったら、わりと落ち込むと思う。さすがに。
──男は度胸。
口元に手を当て、その下ですう……と気付かれないように深呼吸をした。
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