312人が本棚に入れています
本棚に追加
華緒梨の反応が鈍くなったことに及び腰になってしまう。さすがに、逃げ道を用意してしまった。
男らしくサラッと、バシッと決めようと思ったのに、何だこれ。
今まで女を口説く時に、自分のプライドや尊厳までかけて何かを言ったりしたり──そんなのはしたことがない。
華緒梨の気持ちを尊重したいという気持ちは確かにあるのだが、それにしてもこの不発感はどうにも……。
軽く、グラグラと自己嫌悪に陥る寸前の淵でどう次に言葉を繋げようかと焦っていると、華緒梨とふと目が合った。
その瞳が、うるっと涙で潤む。
「え」
驚いて硬直してしまう。すると、華緒梨は慌てて自分の目尻を拭った。
「あ、や、やだ、ごめんなさい」
「……ん」
.
最初のコメントを投稿しよう！