312人が本棚に入れています
本棚に追加
華緒梨は一瞬そのまま俺の顔をじっと見つめて──そして、頬を染めたまま俯いた。
その表情を見て、ようやく安堵が戻ってくる。満更でもないことが判ったからだ。
もう一度口元に手を持っていって、ゆっくりと深く息を吐いた。
華緒梨はそんな俺の様子には気付かずに、もじもじとパフェのグラスの曲線を指先で何度もなぞっている。
「……ごめんなさい、すごく、嬉しい……」
蚊の鳴くような声でそう言われて、肩にのしかかっていた緊張が一気に足元に落ちた気がした。
「……ごめんなさい、って?」
それでも聞き捨てならないその謝罪の意味を、知りたかった。
華緒梨はハッと顔を上げると、自分の発した言葉の他の意味を察したのだろう、慌てて両手をひらひらと動かし否定の意を表した。
「違うの、変な意味じゃなくて」
「じゃ、何?」
「あの、あのね」
.
最初のコメントを投稿しよう!