同じ未来を描いてみたい。

33/34
312人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
   俺なんかは、自分のことを誰かに委ねる……なんて選択肢ははなからなかった。  むしろ自分でも時々鬱陶しくなるくらい、自分のことは自分で決めたかった。  譲渡や妥協という芸当が俺にできるくらいなら、しつこいようだがサラリーマンになっていた筈なのだから。  華緒梨は一旦俯いて──そして、おずおずと俺の顔を再び見る。 「……一筋縄じゃいかないと思うよ、うちの家族、って」 「それはもう、覚悟してるんだけど」 「えっ」 「だって、凰坂ホールディングスの社長に、ここらの夜の世界のボスなんだろ。俺なんか一捻りじゃないの。あらゆる意味で」  華緒梨は、ポカンとしてまたスプーンを落とした。  まあ、自分でもちょっとどうかしてるとは思う。到底勝ち目のなさそうなところに挑みに行くわけだから。 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!