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俺なんかは、自分のことを誰かに委ねる……なんて選択肢ははなからなかった。
むしろ自分でも時々鬱陶しくなるくらい、自分のことは自分で決めたかった。
譲渡や妥協という芸当が俺にできるくらいなら、しつこいようだがサラリーマンになっていた筈なのだから。
華緒梨は一旦俯いて──そして、おずおずと俺の顔を再び見る。
「……一筋縄じゃいかないと思うよ、うちの家族、って」
「それはもう、覚悟してるんだけど」
「えっ」
「だって、凰坂ホールディングスの社長に、ここらの夜の世界のボスなんだろ。俺なんか一捻りじゃないの。あらゆる意味で」
華緒梨は、ポカンとしてまたスプーンを落とした。
まあ、自分でもちょっとどうかしてるとは思う。到底勝ち目のなさそうなところに挑みに行くわけだから。
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