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「いや、虹原さんに言ったのも、本当ですよ。彼女さんに話しておきたいことがある、っていう」
「翠川さん……」
「それと」
「?」
翠川さんは置いていたカバンをおもむろに開くと、そこから6・7冊の本を取り出した。
全部、岳さんの本……?
「うちの娘婿が、虹原さんの本好きなんですよ。全部初版なので、サインいただけませんか」
「……」
「お願いしますよ。本格的に編集作業に入ったら、こんなこと頼めなくなっちゃうので」
岳さんはポカンとして、翠川さんを見つめていた。
翠川さんは、そんな彼にお構いなしって感じで、ずっとニコニコしている。
「……ぷっ」
とうとう耐え切れなくなって、思わず吹き出してしまった。
「あはっ、あはははっ」
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