ただならぬ。

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   勝手に、あたしくらいの娘さんなのかな、って思ったから、ずいぶん早く結婚したんだなぁ……なんて。 「もう55なんですけど」 「うへぇ、めっちゃ若いですよ。詐欺ですって」  岳さんも年齢までは知らなかったらしく、目を丸くして驚いた。 「褒めても優しくしないですよ」 「いや、別に褒めたわけではないです」  きっぱりと言った岳さんに、翠川さんの表情がニッコリなままで止まった。  ……え?  すると、岳さんは翠川さんの顔をしっかり見た上で、続ける。 「男は、顔つきに全部出るからって、銀二……淳成社の担当が」 「なるほど。若く見える僕は頼りないってことですか」 「普通なら」  翠川さんは口の減らない岳さんの顔を見て、微笑を苦笑に切り替えた。 .
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