ただならぬ。

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  「普通なら?」 「はい、普通の一般人なら、って話ですよ。翠川さん、違うと思うし」 「……僕は一般人ですけど」  ハラハラしながらふたりのやりとりを見守るしかなかったけど、別にいがみ合っているわけではなさそうで、ホッとした。  最後の一冊にサインを済ませ、岳さんは本を閉じて一番上に積み上げる。 「何人も作家さん育ててきたくせに、何言ってるんですか。作家から言葉をスルスル引き出せる編集者さんなんて、そうそういませんよ」 「ははは……」  満更でもないのか、翠川さんは曖昧に笑った。 「翠川さん、まだ男の土俵降りる気ないんだろうなって。そういう意味のことを言いたかったんです」 「男の土俵?」 .
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