ただならぬ。

15/40
前へ
/40ページ
次へ
  「はい。なんか、諦めた感じの男って、若くてももうオッサン臭いじゃないですか。翠川さん、そういう感じじゃないんで」 「……」  翠川さんは、ううん……と口唇に笑みを残したまま何か心当たりがあるのか考え込んだ。  すると岳さんは、ニヤッと笑う。 「まあ、上の世代の人がどいてくれないと俺らも立つ瀬がなくなるので、頑張らないと、っていうか。だから、褒めたつもりはないんです」 「ハハハ、面白い人だな」  お腹の底から響くような声で朗らかに笑って、翠川さんは参った、と口を押さえて俯いた。  そして、そのままポンと自分の膝を勢いよく打つ。  その仕草は本当に若々しくて、確かに50代の男性のものじゃない。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

343人が本棚に入れています
本棚に追加