343人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい。なんか、諦めた感じの男って、若くてももうオッサン臭いじゃないですか。翠川さん、そういう感じじゃないんで」
「……」
翠川さんは、ううん……と口唇に笑みを残したまま何か心当たりがあるのか考え込んだ。
すると岳さんは、ニヤッと笑う。
「まあ、上の世代の人がどいてくれないと俺らも立つ瀬がなくなるので、頑張らないと、っていうか。だから、褒めたつもりはないんです」
「ハハハ、面白い人だな」
お腹の底から響くような声で朗らかに笑って、翠川さんは参った、と口を押さえて俯いた。
そして、そのままポンと自分の膝を勢いよく打つ。
その仕草は本当に若々しくて、確かに50代の男性のものじゃない。
.
最初のコメントを投稿しよう!