ただならぬ。

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  「せー兄ちゃんと、何話したの?」  今日、ずっとずっと気になってたこと。  せー兄ちゃんのことだから、そうおかしな話にはならなかった筈……。  生まれながらの硬派、って感じの我が兄を信じてはいるけど。 「ん、浮ついた気持ちだけで華緒梨と付き合ってるわけじゃない……ってことは、判ってもらえたと思う」 「ホント?」 「うん。でも、帰り際……」 「うん?」  岳さんはそこで一旦言葉を止め、そしてクッと笑った。 「何の前触れもなしに華緒梨を孕ませんなよ、って言われた」 「!?」  前にせー兄ちゃんに言われたことを思い出した。  あんな恥ずかしいこと、岳さんにも言ったんだ……! 「な、な、何でそんなっ」 「学生のうちは勘弁してくれな、って真面目な顔で言われたよ」 「……恥ずかしい……」 「なんで。いいお兄さんじゃん。そんなの言いにくいよ、普通」 「そ、そうだけど……」 「先回りして考えてくれる人がいるのは、ありがたいことじゃん。多少下世話でも、身内しか言えないと思うし」 「……うー……」  岳さんはあたしの身体を抱きなおすと、耳元で深呼吸を始める。 「な、何? くすぐったいよ」 「いや、いいニオイだと思って」 「……変態さんだよ、それ」 「人間のフェロモンって、耳の後ろから出てるんだってよ」 「へ……!?」  また、耳元で深呼吸。 .
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