343人が本棚に入れています
本棚に追加
「せー兄ちゃんと、何話したの?」
今日、ずっとずっと気になってたこと。
せー兄ちゃんのことだから、そうおかしな話にはならなかった筈……。
生まれながらの硬派、って感じの我が兄を信じてはいるけど。
「ん、浮ついた気持ちだけで華緒梨と付き合ってるわけじゃない……ってことは、判ってもらえたと思う」
「ホント?」
「うん。でも、帰り際……」
「うん?」
岳さんはそこで一旦言葉を止め、そしてクッと笑った。
「何の前触れもなしに華緒梨を孕ませんなよ、って言われた」
「!?」
前にせー兄ちゃんに言われたことを思い出した。
あんな恥ずかしいこと、岳さんにも言ったんだ……!
「な、な、何でそんなっ」
「学生のうちは勘弁してくれな、って真面目な顔で言われたよ」
「……恥ずかしい……」
「なんで。いいお兄さんじゃん。そんなの言いにくいよ、普通」
「そ、そうだけど……」
「先回りして考えてくれる人がいるのは、ありがたいことじゃん。多少下世話でも、身内しか言えないと思うし」
「……うー……」
岳さんはあたしの身体を抱きなおすと、耳元で深呼吸を始める。
「な、何? くすぐったいよ」
「いや、いいニオイだと思って」
「……変態さんだよ、それ」
「人間のフェロモンって、耳の後ろから出てるんだってよ」
「へ……!?」
また、耳元で深呼吸。
.
最初のコメントを投稿しよう!