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いつもよりワントーン低い声は、そういう声。しかも、耳元で。
悔しいけど、岳さんはあたしがそうと気付く前にそれを示してくる。
……初めてこの腕に強く抱かれた夜も、そうだった。
キスで、愛撫で、もっと深くの場所で──あたしが欲しいものを難なく探り当てて、どこにも逃げられないようにされてしまう。
今思えば、それだって誰構わずするようなことじゃないって、判るけど。
でも、あの時はホントに岳さんの気持ちさえ判らなくて、戸惑ってばかりいたなぁ……。
そのままベッドに連れて行かれて、心も身体も岳さんのことしか考えられなくて。
でも、判ってた。
いつもと同じ仕草なのに……ううん、だからこそだろうか。
岳さんのすることひとつひとつが、確かにあたしを大事に愛おしんでくれている。
岳さんの想いが全身に降ってくるみたいで、いっぱいいっぱいだ。
あたしには、手を伸ばすことでしか応えられなくて、もどかしかった。
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