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いつもは恥ずかしくて出せないような声が出たし、恥ずかしくて言えないようなこともたくさん言った。
その度、岳さんの眉根が我慢ならないとでも言うように寄せられて、更に促すんだ。あたしの全部を。
変なの。
こんなに恥ずかしい格好で恥ずかしいことを繰り返しているのに、言葉にならない言葉で想いを注ぎ込まれて──なのに、奪われていくのは理性という名の羞恥心。
「好き、岳さん、好きぃ……」
自分で彼の背に腕を回して、縋りつく。
もっとたくさん色んなことを感じたいくせに、このまま岳さんを抱き潰してしまいたい。
もう、ひと時も離れられないようにしてしまいたい。抱きしめて、キスを繰り返して、本当に息もできなくなってしまうくらい。
そうしたら、もっと行けるのかな。
あたしと岳さん、ふたりしか触れられないような──そんな場所に。
そんな強い欲望が突き上げてきたのは初めてで、苦しいのか幸せなのか判らなくて、思わず涙があふれてきた。
息を切らしながら岳さんはそれに気付いて、あたしの涙を拭いながら更に強く抱き返してくれる。
──あ、そっか……。
いきたいばしょは、いっしょなんだ。
どこまでも堕ちていくような至福の滑落感に襲われて、あたしはやっぱり岳さんを強く抱き返すことしかできなかった。
……だって、堕ちるならやっぱり、同じ場所がいい。
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