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「これ、なあに?」
起きて、欠伸をしながら着替えを済ませた時のことだった。
華緒梨はすっかり目を覚まし、シャンとした様子で寝室に戻ってくる。
彼女が手の中に収まる程度の大きさのものを持っているということは、裸眼のぼやけた視界でもなんとなく判った。
連日の徹夜のツケが、まだ残っている。目をしぱしぱさせながら華緒梨がそばに来るのを待つと、彼女はそっと手を差し出した。
それは、黒地に銀の箔押しの加工が施されたデザイン名刺──“小説家 虹原岳”と書かれている。
「……あー」
すっかりその存在を忘れていた。
そうだ。これを貰ったから、「自分で名刺作らないと」と思い始めたんだっけ。
華緒梨が見つけてきたたった1枚は、記念に残しておいたものだ。
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