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あと、俺によくしてくれたのって、誰がいたっけ……これまでに見過ごした善意がなかったか、よく考えよう。
名刺一枚引っ張り出してきただけで、こうして俺に大事な荷物を背負わせてくれる華緒梨の横顔を見た。
──何もかも、お前が大事だからなんだぞ、と。
言わなくても華緒梨が悟るのは、いつになるだろう。
きっと、そう遠くない未来にその瞬間があるんだと、今なら確信できた。
「華緒梨」
「うん?」
「今度、ゆりちゃんにメシ行こうって誘っといて」
「え? うん、判った」
何の疑いもなく、華緒梨は名刺を片付けながら頷く。
「あと。ハイ」
華緒梨の手を取って、そこに1枚だけ残しておいた名刺をポンと乗せた。
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