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年が明けた。特に変わりは無かった。こないだまでツリーがあった場所に門松が居座る。実家に顔を出してとんぼ返りした。仕事はどうだ、結婚はまだか、と毎年同じ尋問をする親戚を相手にするのが面倒だった。 センセイからは何の音沙汰も無かった。互いの連絡先を知らないし、別れたのだから当然だ。それでも私はアパートでじっとしていた。ドアがノックされるのを無駄に待っていた。勿論センセイは来なかった、待ちぼうけ。待っている間に痣も薄くなり、仕事が始まる頃にはほとんど消えていた。
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