終章・あしたも、あさっても。

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   岳さんのマンションのエントランスに入ったところで、あたしの携帯が鳴った。  ──誰かと思えば、お父さんだ。  あたしは液晶を見つめながら、「ん?」と首を傾げた岳さんに黙ってそれを見せる。  すると岳さんは苦笑しながら肩を竦めて「俺に訊くなよ、出ろよ」と言った。  そう言うと思ったけど、このあとふたりでゆっくりできると思っていたあたしとしては大いに不服だ。 「もしもし?」 『おっ、華緒梨かー』  いつも朗らかなお父さんの声は、若々しい。  下手をすればせー兄ちゃんどころか、佐々木さんや岳さんくらいの人なんじゃ……と思ってしまう。 『今、岳くんと一緒なのか?』  ギクリ、と嫌な予感がした。 .
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