終章・あしたも、あさっても。

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 あたしはクスッと笑いながらその問いを飲み込むと、ポケットに手を突っ込んだままの岳さんの腕に自分の腕を絡ませる。  こうすると、歩いてるうちにこの不機嫌は治まる。知ってるんだ。もう。 「そういえば、さっきネットの本屋さん見たら、もう出てたよ」 「ん?」 「岳さんの新刊。発売予定って」 「マジか。早すぎだろ」  あたしは岳さんと一緒に道の端に寄って立ち止まり、さっきブックマークしたサイトを彼に見せた。  そこにはさっき見た通り、“言い訳ロスタイム(文庫)”が予約受付中になっていた。  これは、翠川さんと一緒に作っている書き下ろしの文庫本だ。 「ホントだ」  何も聞いていなかったらしい岳さんは、ビックリしながら携帯の画面を見ている。 「それだけじゃないよ、ほら」 .
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