終章・あしたも、あさっても。-4

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   ずっと──ずっとずっと忘れてた……!  頭の中に、蝉の声がわんわんと鳴り響く。  その鳴き声はあたしの頭の中でグルグルと螺旋のように回って、その中心にあるものを引っ張り出していく。  どうして忘れてたかって──。 「岳さんのバカ!」  思わず、一番最初にそれが口をついて出た。 「……っ、は……?」  開口一番にそんなことを言われたショックか、岳さんは目を見開いて固まった。  あたしだって自分の言葉のチョイスがちょっと大袈裟だな、というのは判っているんだけど……。 「岳さんのことがあったから! それで一度お別れしちゃったから! もう、すっかり頭から抜けてた、忘れてたよ!」 「俺のことって……」 .
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