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“お父さん”らしい口調が何だか新鮮だったけど、声も態度もリラックスしたものだった。
岳さんの顔を見ると、彼も特に緊張した様子はなかった。
……いない間に、話しておいてもらおうかな……。
岳さんはお父さんに、2冊を同時に渡したそうだったし。
もう文庫の方はもらってる、なんてことはあたしの口から言わない方がいいかも……。
細かいことを考えながら、パウダールームに足を向けた。
パウダールームの、よく磨かれた大きな鏡を前に、溜め息をついた。
本当に目元が腫れ上がっている。
ここまでちゃんと連れてきてくれた岳さんに感謝しながら、あたしはバッグの中の文庫本に目を留めた。
……バスの中で号泣してしまった理由は、これ。
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