終章・あしたも、あさっても。-4

3/33
前へ
/33ページ
次へ
  “お父さん”らしい口調が何だか新鮮だったけど、声も態度もリラックスしたものだった。  岳さんの顔を見ると、彼も特に緊張した様子はなかった。  ……いない間に、話しておいてもらおうかな……。  岳さんはお父さんに、2冊を同時に渡したそうだったし。  もう文庫の方はもらってる、なんてことはあたしの口から言わない方がいいかも……。  細かいことを考えながら、パウダールームに足を向けた。  パウダールームの、よく磨かれた大きな鏡を前に、溜め息をついた。  本当に目元が腫れ上がっている。  ここまでちゃんと連れてきてくれた岳さんに感謝しながら、あたしはバッグの中の文庫本に目を留めた。  ……バスの中で号泣してしまった理由は、これ。 .
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加