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岳さんは続けて言う。
「別にそれだけ書きたいわけじゃなくて。どんな人間でも、一度はそういう目に遭ってるだろ。泣いて甘えてどうにかなると思うなって教える為に、親が時々泣いてる子どもを放置したりする。でも、何にも知らないヤツがいきなりそれだけ見たら虐待に見えたりな」
「ああ、そういう見方があるんだ……」
「放置されてる子ども本人の受け取り方もあるしな。俺がガキの頃は“今、俺、試されてる?”とか思ってたし」
「なあに、その反骨精神。それはそれでマイノリティだよ」
「ふ。まあ、そういうこと。親に見捨てられた、って感じる子どももいるだろ。それを、若いヤツの生き様に反映してなんか書けたらなって。まあ、青春小説だな」
ネグレクトで青春小説、って……。
ホントに、物書きさんの頭ってどうなってるんだろう……。
岳さんはあたしの考えていることなんてお見通し、って感じでふっとほどけるように微笑んだ。
「最初から、そのテの重いこと書きたかったわけじゃないから。なんか、主人公が浮かんだ瞬間“重そうなヤツだな”って思って。理由を探ったら、ああそういうこと書かないといけないんだな、って」
「なあに、それ。新しい友達ができたみたいな言い方」
「ああ、そういうの、ちょっと近いかも」
「え?」
「新しい友達、っていうの」
あたしの言葉に、岳さん自身も「ようやく腑に落ちた」とか言って笑ってる。
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