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終電後の繁華街の静かな通りを、一人の女が歩いている。
胸元を強調した服にミニスカートはその外観上の年に見合っていな
かったが、彼女自身は何の恥じらいも見せていない。
客との待ち合わせ場所である、寂れたマンションの裏に着いた。
白壁にもたれかかっている細身の気弱そうな男.
安物の灰色セーターから突き出た弱々しい両腕を見て、女は楽な仕事
であることを直感した。
ひょっとすれば、手だけで彼はイクかもしれない。
おそらくあの様子じゃあ一発だけ。
出したってことでこっちの役目は終わり。
女は笑顔を作り、客に話しかけた。
「あの、ハンドルネーム”スラッシュ”さんですよね、そのセー
ター」
スラッシュと呼ばれた男は女の方に顔を向けた。
若い男のようだが、お世辞にもハンサムとは言えない。
笑顔を作っているつもりらしいが、目の隈が不気味な装飾として作用
している。
「私、ミホです。ハンドルネーム、ミホ」
「……」
「出会い系掲示板、書き込みまし――」
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