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「やめなよ!」と、その手を止めたのは――。
「ツグミ……」
「ツバメは悪くないよ、もちろん今言ったお父さんお母さんを否定した言葉はダメだと思う、でもツバメはイライラしてたんだよ、だからそんな言葉も出てきたの。私だって、そう私だってこんな生活、いやだよ」
まさかツグミがこうした行動に出るとは誰も予想していなかった。いつもマリオネットのように『台本』に従っていたツグミ。ツグミもまた両親と同じなのだとツバメは思っていたが、どうやらその考えを改める必要があるらしい。
ということは、これは思わぬ好機か。
「ツグミ、何度も言うようだけど、お父さんはあなたたちのためにこうしているのよ。多少自由がないかもしれない、でもそれは――」
「なあ」とツバメはそこで母の言葉を断った。
「それはあんたの言葉か? それともそれは、『台本』の言葉か?」
「――!」
「……あんたらの言葉には心が感じられねぇよ」
それだけ言い残してツバメは奥へ消えた。躊躇いつつもツグミも自分の部屋へ戻る。
『台本』は二人に踏まれてひどく歪んでいた。
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