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「そろそろ『台本』についてよく考えるべきかもしれんな」
くしゃりといびつな『台本』。
ツバメの『台本』。
自分が書いた『台本』。
『台本』。
鷹夫は静まったリビングの中、『台本』を手にとって自嘲した。これがもしも家族のためではなく、枷として束縛していたというのなら。
「よく考えるって……鷹夫さん……」
「『台本』、という制度をやめる可能性もある、ということだ」
「そんな! だって『台本』は――」
「そうだ、家族のためだ。そう、思っていた」
しかし今では自分の判断に、自分の言葉に自信がない。こうして我が子を苦しめているというのなら、『台本』の撤廃までとはいかずとも、ツバメ・ツグミの二人の意見を取り入れることぐらいは譲歩するべきだろう。
「まあ焦るな、今すぐというわけではない。一週間。一週間だけ考えさせてくれ」
その一週間で見つかるだろうか、『台本』ではなく自分の言葉が。
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