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明かりを落としたツグミの部屋。
勉強机のライトのみを点灯させている。部屋の隅まで白い光は届かず、明と暗がモノクロのような世界を創造する。
いつも見ていたはずのクマのぬいぐるみが弱い光を受けツグミの目には不気味に映った。
「『台本』を俺たちで作ろうと思う」ツバメは言った。
「作る……? それってどういうこと?」ツグミは尋ねる。
互いの顔は見える。が、やはり不気味だ。自分は道を踏み外しているんじゃないかという倒錯に陥る。もちろんそんなことはない、はず。自分で自分を納得させてツバメの言葉を待つ。
「だから、俺たちで『台本』を書くんだ。それで生活する。今ある全ての『台本』を処分して、俺たちで書いた『台本』とすり替えるんだよ」
「えっ、でもそんなことしたらすぐお父さんたちにバレちゃうんじゃ……」
「バレるかよ。あの二人はいわば『台本』の傀儡だ。『台本』なしでは生きていけない。それくらいこれに頼って、縋って、生きているんだ、それなのにその『台本』を疑ったりなんかすると思うか?」
「でも『台本』を作ってるのはお父さんでしょ?」
「ああ、だがいくら自分で作ってるとはいえ毎週毎週書いてんだ、そんなに詳しく中身のことについて覚えてるわけがない」
「そう、かな……」
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