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ツグミは不安には思うものの、それは口には出さない。
口に出さないことを後々にツグミは悔やむこととなる。もちろんこのときの彼女には予測できるはずもない。鶴江がツバメの帰宅時にどうしてソファで寝ていたのか。このことをツグミが言及していたら――。
物語は進む。
時計の針は止まらない。
「そうだって。まあ本物の『台本』とも見比べながら作れば大きな齟齬はきっと生まれないはずさ」
くくく、とツバメは笑う。たいそう楽しそうに。
その姿だけ見ていれば無邪気ないたずらっ子である。しかし間近で見ていたツグミはそうは思わなかった。
兄の目は闇のようにくすんでいた。薄暗さのせいだと信じたかった。
「明日一日で今週一週間の『台本』を作ってみようぜ。それであの二人が寝静まったらこっそりとすり替える。一週間。一週間分だけまずは作るんだ」
それで見つかるはずだ、『台本』に縛られることのない俺たちの『自由』が!
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