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差し込む陽は影を作る。その日の朝も目覚めが悪い。低血圧と秋の肌寒い気候のダブルパンチもさることながら、『非現実的』な夢から戻されたことが一番であった。
ああ、夢か。……いっそのこと夢のままなら良かったのに。
願いを聞いてくれる神もおらず、うんざりしてベッドから降りた。
朝は嫌いだ。現実と向き合わされる。
リビングではすでにツバメの両親、それとツバメの妹のツグミが朝食を摂っていた。そこに会話は無い。ただ黙々と、栄養摂取のためだけに食物を口内に放っているかのような印象を受ける。いつもの光景。慣れたというか諦めた。
この家庭はそういうものなのだ。そう考えると楽になった。
「おはよう」機械的に言う。
「おはよう」機械的に返される。
家族なんてものは同じ家に住んでいるだけの他人だ。いつからかそう思う。
彼らに倣ってツバメも席に着く。まるでこのタイミングでツバメが席に着くのを予想していたかのように卓には湯気が立っている白米と味噌汁があった。いや、実際に予想していたのだろう。規則正しい生活をしていれば、自然と体はそれに合わせる。だから、悔しいがこれは仕方ない。
箸を持ち、味噌汁に口を付けようとしたところで、トサッと乾いた音がした。
「これが今週の分だ」
ツバメの父――鷹夫は端的に告げた。
幾枚もの紙の左側をホチキスで留めた本のようなもの。
その表紙には「11月26日~12月2日」とだけ書かれていた。
うんざりは加速した。それは嫌悪の対象にしかならなかった。
叩きつけるように箸を置く。
「ごちそうさま」
ツバメは結果一つも手を付けていない朝食に背を向けた。
それから「行ってきます」と告げて歩き出す。
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