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「ああ、なんてことを……!」
鶴江はツバメを追おうとするも、自分よりも二回りほど若い男子の足に叶うはずもなく、あえなくその背中が消えていくのを眺めた。
鶴江はこの後を心配した。
ツバメの心配――ではない。その父・鷹夫の心配である。
もっと正確に言えば、ツバメを心配する鷹夫の心配、であろうか。
「く、ぅぅ、ツバメ! ツバメぇ!」
ガツンと大きな音を立てて食器が一瞬宙に浮く。
ああ、心配したことが起こってしまった。
何度も何度も卓をたたく鷹夫をなだめようと鶴江はその傍らに寄り添った。
「お父さん、大丈夫です、ツバメは心配ありません、きっと何事も無く帰ってくるでしょう、ええそのはずです」
それでも鷹夫は駄々をこねる子供のように何度もこぶしを振り下ろす。
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