第2話

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*********************************** 毎週火曜午前中は、社長御前会議と言われる「局長討論会」が定例で行われる。 実際は、討論会とは名ばかりで、1週間の売上進捗やトピックスなどを簡単に 報告する。10人の報告で、ほぼ30分以内に終わる。 しかし、竹下の足取りは重かった。先週社長に夏美との関係を指摘されてから 初めての会議だ。会議には、夏美も出席するし、イノーマンも出席する。 夏休み明けで、3週間ぶりの開催のため報告事項も溜まっている。 それよりも、その二人が出席しているという事実が、ますます竹下の心に 重くのしかかかった。 「おはようございます。」 社長執務室に続々と集まった局長たちが次々と挨拶を交わす。夏休み明けで、 真っ黒に日焼けしている者、大声で笑っている者など、いつもどおりの雰囲気だ。 竹下は、夏美とはいつもどおり、軽い会釈のみの挨拶だったが、 伊能には無視された。 竹下を無視したまま自席に向かう伊能の背中を、強い視線で夏美が睨みつけていることを、竹下は気づかなかった。 「続いて、イベント事業局長お願いいたします。」 進行役の社長室長が、竹下を指名した。 竹下は、夏休み中開催された「白亜紀・化石展」の他、2つほどのイベントの状況を説明した。 「白亜紀・化石展」は、夏休みの子供達向けの、恐竜イベントで、イベント事業局では今年最大のイベントで社全体にも協力を仰ぎ、利益拡大に努めていた。 ところが、会場が木更津と遠かったことと、価格設定が子供3,000円と割高であったことが裏目に出て、収支は悪化。 利益目標は2億!と大見得を切ったラインから実に3億も下回り、 採算ラインからも1億ショートしている。 最終日まで、残り1週間ではとても取り返せる額ではない。 社を挙げたイベントで、赤字を出してしまうのだ。 今日はその中間報告をせねばならない。 通常でも報告したくない事項であるが、今日は特に気が重い。 報道局長の伊能にどう責められるか・・・ 「以上、イベント事業局の報告でしたが、なにかご質問ございますか?」 進行役の言葉が終わらないうちに、伊能が、怒声を発した。
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