第2話

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「さっき、お盆の3日間が台風で客足が鈍った、とか言っていたが、 お盆なんて元々客は入らないだろう。なに台風のせいにしてんだよ! そもそも木更津なんて、わざわざ行きゃしねえんだよ。 あんだけ報道してやったのに、赤字見込だあ? どのツラ下げてモノ言ってんだ!! お前、お盆の間どこ行ってたんだ?この台風で、入りが悪い会場ほっといて誰と どこに行ってたんだと聞いてんだ!」 「返す返すも申し訳ございません。すべて私の責任でございます。 しかしながら、あと一週間ありますので、出来る限り巻き返しを図りたいと思っ ております。」 「だから、お盆は会場にいたのか、いないのかどっちなんだ?」  答えられない・・・・お盆は、夏美と北海道に行っていたのだ。 伊能はそこまでも掴んでいるのだろうか・・・。 竹下の鼓動はますます早くなり、額に汗が、じわりと滲んできた。。 「どうしたんだ、答えられないのか?夏美!お前はどこにいたんだ!!」 「私ですか?私は実家の年老いた母の顔を見に行ってましたわ。伊能局長にも、 お土産のさつま揚げをご賞味頂いたかと思いますが・・、」 全くの無表情で、伊能の唐突な質問にサラッと答えた。 「伊能くん、そこまでにしとこう。あとの時間が詰まってるんだ。 竹下くん、残り1週間最善を尽くしてくれたまえ。最終日には私も行くから。」 社長の坂森が助け舟を出したところで、竹下の発表は終わった。 ほうほうのていで、執務室を後にした竹下は、カツカツとハイヒールを響かせ ながら、脇を通り過ぎようとする夏美から、耳元で囁かれた。 「ランチしよう。作戦会議よ!桃花林ね。」 頭がまだ真っ白な竹下は、視線が定まらないまま、自席には戻らず、ホテル・ オークラの桃花林へと向かった。 ****************************************
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